街でツクル 007
2014.05.21

FUTAKOTAMAGAWA GATHERING 振り返り座談会
いろいろな協力団体のもとに5月5日・6日に開催された「FUTAKOTAMAGAWA GATHERING –つくって・あそんで・あつまって-」
事務局では後日、協力いただいた団体の代表者をお招きし、イベントの振り返りを兼ねた座談会を開催。
参加者それぞれが普段の活動の視点からみたイベントの感想やそのあり方について話し合いました。
和やかな雰囲気の中、これからの「こどもと街」を考えていく、たくさんのヒントが生まれました。




日時2014年5月21日(水)
会場カタリストBA
東京都世田谷区玉川2-21-1
参加者こどもみらい探求社
小竹氏・小笠原氏
WorMo’(コクヨ株式会社)
安永氏
深沢アート研究所
山添氏
しあさってプロジェクト事務局
福島・坂井田(東急電鉄)
熊井(NPO法人CANVAS)


座談会参加者のご紹介


こどもみらい探求社 小竹 めぐみ氏

”こども×◯◯”というコラボレーションを軸に、保育士の専門性を活かし、 こどもにとって本当に良い社会をカタチにする。 今回のイベントでは「みんなでつくる青空図書室」にて絵本をきっかけとしたワークショップや読み聞かせを実施。 対話を通して親の支援をする、NPO法人オトナノセナカ代表でもあり、 「おしえて!保育士さん」にて働くママに向けたダイアローグ(対話)を実施。

【こどもみらい探求社 小笠原 舞氏】
小竹氏と共に、こどもみらい探求社を設立。同時に子育てに対する様々なサポートをする子育て支援コミュニティasobi基地の代表でもある。今回のイベントでは「みんなでつくる青空図書室」で遊び場のプロデュースを担当。

深沢アート研究所 山添joseph勇氏】

アートを基軸とした「こども造形の研究」と「緑化の研究」を活動とする山添joseph勇とカブによるアーチストユニット。今回のイベントでは「みんなでトンネルの川をつくる」を担当。

WorMo’(コクヨ株式会社) 安永 哲郎氏】

仕事と子育てを両立し、毎日様々な役割を担うワーキングマザーを応援する「WorMo’」を展開。 今回のイベントでは、山添氏と共に「みんなでトンネルの川をつくる」を担当。

東京急行電鉄株式会社 福島 啓吾、坂井田 麻子】(しあさってプロジェクト事務局)

二子玉川で活動をするクリエイティブ・シティ・コンソ—シアムのキッズワーキングから生まれた 「二子玉川しあさってプロジェクト」の事務局として、様々な街づくり活動を継続的に展開。

NPO法人CANVAS 熊井 晃史】(しあさってプロジェクト事務局)

二子玉川しあさってプロジェクト事務局として、街づくり活動をサポート。 普段はNPO法人CANVASプロデューサーとして、こどもたちが自ら創造し表現する環境づくりを 目的とした様々なプロジェクトを手掛けている。 今回のイベントではイベント全体の企画制作、アートディレクションを担当。


イベント当日の様子をまとめた記事はこちら
「東急沿線情報サイト とくらく」掲載記事はこちら


大切なことは「こどもがやりたいこと」を引き出すこと



 【こどもみらい探求社 小竹 めぐみ氏】     【しあさって事務局 福島 啓吾】      【しあさって事務局 熊井 晃史】

熊井:イベントに保育士さんがいるってことはあまりないですよね。僕自身見たことがありませんでした。

小竹氏:確かにあまりありませんね。
イベント当日も、「私たち保育士なんです。」と言うと、「え!?」と驚かれる場面がありました。
そして、保育士だってわかった瞬間に顔つきが変わって、いろいろと子育てについての質問をする方がいらっしゃいました。

小笠原氏:保育士がもっている「保育の力」を、イベントのなかでうまく活かすことが出来たのではと感じています。イベント当日は予想以上の来場者で、その場で判断して対応しなくてはいけないことが多々ありましたが、保育士みんなで連携しながら柔軟に対応することが出来たかなと思います。
保育士って、普段からいろいろなこどもたちの、その時々の体調や気持ちを注意深く観察して寄り添っていくのが仕事で、保育士同士の引き継ぎなんかもしっかりやっていて。
そうして培われた保育士特有の「対応力」や「チームワーク」が、例えば今回のイベントのような保育園の外の場でも、いろいろと活かしていけると思っているんです。

福島:確かに今回の保育士さんたちの「対応力」と「チームワーク」は目を見張るものがありました。初日が終わった後にかなりしっかり反省会をされていて…。
二日目にメンバーが変わっても、その反省会の内容がきっちり伝わっていて、いろいろと運営に工夫が凝らされていたのにはとても驚かされました。

   【深沢アート研究所 山添 joseph 勇氏】    【こどもみらい探求社 小笠原 舞氏】    【WorMo’(コクヨ株式会社) 安永 哲郎氏】

山添氏:私は普段から、こどもたちと造形ワークショップを一緒に行っています。今回のイベントで保育士さんがいることがとても面白かった。
ワークショップをやっていると、つくり方や、やり方を教えてしまう人もいる。こどものワークショップで大切なことは「こどもがやりたいこと」を引き出すこと。
保育士さんはこどもと自然に会話ができるので、そこを引き出すことができて、ワークショップの場の雰囲気がとてもよかったと感じました。

熊井:山添さんはかなり以前からこども向けワークショップを美術館とかで開催されていますが、今回はそれが駅前に出てきている。保育士さんも、一般企業の方も同じ空間にいる。
様々なフィールドで活躍している人たちが駅前の一つの空間に集まったということで、イベント全体のいい雰囲気をつくることが出来たのではと感じました。


考えることのできる余白を残すことの大切さ




熊井:先ほど山添さんがワークショップで「こどもがやりたいこと」を引き出すことが大切だというお話しがありましたね。まさにFUTAKOTAMAGAWA GATHERINGでも、イベントのつくり手側がつくりこみすぎない「余白」のようなものを大切にすることを心がけていました。

小笠原氏:大人、特に出来る人は、こどもたちにやり方や答えを教えたくなっちゃうんですよね。

熊井:すごく大切な感覚だと思うんですよね。
例えば、「みんなで紙飛行機をとばしたら」では、あえて作り方を教えない。「いろんなかたちの紙飛行機があるよ!」という完成形の写真だけしか見せない。
そこからは自分で工夫して折り方を考えてみよう!というコンセプトの企画でした。
今回のイベントは、事務局が主導で進めさせて頂いた企画以外の協力団体のみなさんにお持込み頂いた企画にも、はからずもその感覚が共通していて、「考えることのできる余白を残すことの大切さ」を感じている人たちが集まったイベントでもありました。

福島:一般企業だと余白が「リスク」になるので、なるべく余白を減らしてシナリオをつくりたがる傾向にありますよね?
我々なんかもそういう「先回り心配症候群」に陥りがちなんですが笑

熊井:普通そうですよね笑

福島:でも、それだと、色々なことが予定調和で面白くなくなっちゃうんですよね。
今回、シナリオをつくりこみ過ぎなくてもちゃんと「場」が成立したことは、とても印象的でした。
それはイベントの関係者が、余白をステキなバランス感覚でうまく取り持っていたからだと思います。

安永氏:昨年度、しあさってプロジェクトで2回ほどイベントを実施した経験(※)からなんですが、参加型イベントで企業の名前が前面に出過ぎると来場者が身構えてしまうんですよね。
そんな空気にならないように、今回のイベントでは「参加者も主催者もみんなお互いが何者かを知らなくても、自然と顔見知りになれるような場ができればいいな」「自己紹介のようなことを、遊びを通じてできればいいな」と考えていました。
そんな雰囲気をつくることができたのは、つくりこみ過ぎない「余白」があったからこそだと思います。
またもう一つの要因として、来場者の動線をつくりすぎない、こっちから入って、こっちから出てくださいということをしないで、どこからでも入れるようなレイアウトにしたのも、空間上の余白として効果的に機能していたのではないかと感じています。
※安永氏は以前、しあさってプロジェクトで別のイベントにも参加しています。(街でツクル003,005


こどもとの遊びを通じて大人同士も繋がっていく




熊井:今回のようなイベントは二子玉川以外では成立しないイベントだったかもしれませんね。
余白のあるイベントは、その余白がトラブルを呼び起こすこともありうるわけですが、二子玉川では普段から同じ空間でワークショップが重ねられてきていることもあるのか、そういうトラブルが全く起こらなかった。
イベントに来てくれた人も混んでいるなとわかると、「もー入れないかな?」とか雰囲気を感じていたり、道具の取り合いなどもおこらなかったり…。これって結構すごいことだと思うんです。
実はこういうところに、二子玉川の地域力を垣間見るように思いました。

小竹氏:確かにそういう場面はありませんでしたね。二子玉川に集まる人の人柄の良さを感じました。
ただ一方で、家族間を超えようとしなかった雰囲気も、少し感じましたね。もっと家族間の壁を取っ払うような仕掛けも考えられるな!と思いました。

小笠原氏:私もそれは感じましたね。以前、関西でasobi基地を展開したことがありました。関西の方はフランクな方が多いので、すぐに家族同士が仲良くなるんですよね。
関東と関西の違いはあるけれど、そんな閉じた関係値でも、こどもとの遊びを通じて大人同士も繋がっていくことが出来るんです。それを継続的に続ければ新しいコミュニティをつくることが出来ると思うんですよね。
二子玉川に集まる人たちも、壁を超える一歩を踏み出すための仕掛けがあれば、すぐに打ち解けて仲良くなると思います。
そんな仕掛けが街の中に常設されている場があっても面白いですよね。



山添氏:川のトンネルでは来場者がイベントに入りやすいよう「目線」に気をつけました。
トンネルの上には風で動く仕掛けと鯉のぼりがあって、その下にカラフルなトンネルが見える。
それは、駅から出て来た人の目線がまず上にあつまって、それから下には人があつまっていることに気が付く。
鯉のぼりが上にあって、下に人がいる。それがとても大切なことなんです。

安永氏:その仕掛けはとても効果がありましたね。横断幕やメガホンでアナウンスをするんじゃなくて、「あの木の下に集まろう」というようなノリで人々が仕掛けのもとに集まる雰囲気がとてもよかったです。

山添氏:そうなんです!その時に木の記憶はないんですけど、なんか気持ちのいい場所だったなと思うことが大切なんですね。


街なかのスペースでコミュニケーションをする文化




安永氏:今回のイベントを、この2日間だけで終わりにしたくないって気持ちがありますね。
その場限りで消えてしまう「スポット的な瞬間」にせずに、街の中の日常の時間につながっていくきっかけにできないかという考えが、今回のイベントのテーマでもあったんじゃないかと思います。
継続して同じようなイベントをやっていなくても、「前ここでこんなイベントをやっていたよね」「いろいろな人とお話したよね」という「感覚」が、日常生活のなかに連なっていくとよいと思いますね。

福島:それは言い換えれば、街なかのスペースでコミュニケーションをする文化・機運を醸成するということですよね。
二子玉川に限らず都市周辺部の街って、例えばここ数年で住み始めた人たちと30年以上住んでいる人の両方が住んでいたり、いろいろな職業の人たちが住んでいたり、思っていたよりも一様ではないんです。
そして案外、それらの人々が混じり合っていないケースもままあって、それらのコミュニケーションのきっかけを作っていくことって重要な街の取り組みなんです。
地域の中でも、例えば地元密着の商店街なんかはコミュニケーションの文化が培われていて、商店街イベントのなかで、知らない人同士でも気軽でざっくばらんな会話が生まれる場面があったりするんですが、人々が行き交う「街なか」に、そういった気軽なコミュニケーションのできるスペースがたくさんある街って、こどもにとっても大人にとっても、素敵な街だと思います。

安永氏:二子玉川は、駅前にライズや髙島屋といったショッピングセンターがあって、その先には商店街がある。
それらの周辺にある住宅街では、戸建てで使っていない部屋を子供が集まるスペースとして街に開放したり、空き家を有効活用しようという活動もしていたりする。
二子玉川を歩いていると、そんな「都市のレイヤー」のようなものが見えてくるんですよね。
ガレリアでイベントをやっていると、新しく引っ越してきた家族が多くきている印象があって、「街の中でどこにいけば楽しいのかな?」と考えながら、行き場所を求めて手始めにショッピングセンターに来てみた、というような人たちが結構いるように感じられます。

福島:確かにそうですね。
一方で、地域の方々で、あまりショッピングセンターの方には来ない、という人もいたりして。街が構造化しているんですよね。

安永氏:そうですね。イベントでは地域で行われている取り組みのチラシを設置したコーナーがありましたが、結構みなさんが熱心に選んでいましたよね。
地域で活動している少年スポーツチームのチラシなどをお父さんたちが真剣に目を通して持って帰るんです。それはとてもいいなと感じました。
チラシをきっかけに知らなかった地元を探索してみようという気持ちがあったのかもしれないですね。
FUTAKOTAMAGAWA GATHERINGをきっかけに多様な情報がより広い範囲に発信されることで、地域の他のイベントにも来場者が増えればすごくいい話だなと感じると共に、実施したことの大きな意味にもなると思います。



福島:振り返ってみると、今回のFUTAKOTAMAGAWA GATHERINGは、なかなかチャレンジングなイベントでしたよね。ここで得た「気付き」を次に伝えていけるといいですよね。

熊井:そうですね。

福島:でも、写真だけじゃなかなか伝わらないですよね。イベントに訪れた人たちはイベントの雰囲気を感じてくれたと思うのですが、イベントに来なかった人たちにはなかなか伝わらないですよね。今回、二子玉川で生まれたものがいろんな所に広がって、それぞれの街に特有なモノが生まれればいいとも思っています。

坂井田:例えばグラフや表を使って伝えることが出来ると良いですよね。「街づくりに共通で必要なこと、この場所だから出来たこと」のような区分ができるとわかりやすいですね。

熊井:今回のイベントが成立した理由を考えると、「イベントの関係者の目線がそろっていた」ということが重要でしたね。その「目線」がどんなものだったのかをまとめられたらいいですね。


   【しあさって事務局 坂井田 麻子】      

熊井:我々が今日話をしてきた「こどもの主体性を見守る」とか「参加の余白を残す」っていうコンセプトは、伝え方に気をつけないとなかなかうまく伝わらないですよね。

小笠原氏:そうですね。今回のイベントは、一般的な商業施設のイベントが重んじてきた価値基準とは違う基準を大切にして取り組んだと思います。
集客を目的としたイベントと今回のイベントとの違いを比較すると、分かりやすいし広く伝わっていくかもしれませんね。
一般のイベントでは「楽しさ」に重きをおいているものが多いとおもいます。
でも、キャラクターショーとかって、その場の楽しさだけで終わってしまっているところがありますよね。
今回のイベントはその時だけの楽しさだけじゃなくて、そこからこどもたちの「育ち」に繋がっているところが特徴的だと思います。
どの企画も「学び」や「育む」という要素を含んでいましたよね。そんな大切にしている価値観の違いを参加者に伝えることができるといいのかもしれませんね。

安永氏:確かに一般的なイベントだと、集客人数や売上貢献の効果など商業的価値だけが成功指標として重視されがちです。
でも、今回のイベントでは、そうじゃないところにも指標を置いたわけで。
そういうコンセプトのイベントからどんな新しい「力」が育まれていくのかということに関して、企画した我々は何らかの社会的価値を生み出すことができる可能性を強く実感したわけですが、そのワクワク感をまだ経験していない人に説明していくためには、新しいボキャブラリティが必要になってくるなということを強く感じます。

小笠原氏:新しい「街のイベント」の概念や位置づけを整理していく必要がありますね。

安永氏:イベントで直接的な収益が生まれるカタチではなくても、街や人を知ったり関わったりすることの「きっかけ」を生み出していきたいです。

小竹氏:イベント終了後にいろんな所から、「次回のイベントはいつ?」という問合せを頂きました。
それを聞いて、今回のような活動や想いをバトンのように繋げていくことが大切だなということも感じました。
そのバトンが続いていく、繋ぎ目がとても大切ですよね。

熊井:そうですね。そういう声を大切にして、この想いと熱量を今後に繋げて行きたいですね。
もっと、こんなお話しをしていたいのですが、時間が全然たりませんね笑



終わりに


FUTAKOTAMAGAWA GATHERINGの振り返りとして、開かれた今回の座談会。 イベントの振り返りはもちろん、これからのイベントのあり方や、街づくりのなかで大切にしたいこと、街の中の気持ち良い空間の作り方など、さまざまな意見がでました。しあさってプロジェクトは今回語られた内容と熱量を大切にし、今後も「こどもと街」の活動を行っていきます。